開業時、名刺・チラシとホームページはどの順番で用意するか
印刷前に決める5項目とQRコードの注意点
森啓亮(代表) / CRE-COMSENCE(クリコムセンス)

開業のときは、ホームページの中身より先に「アドレス(ドメイン名)とメールアドレスの形」を確定させ、それを踏まえて名刺やチラシを印刷する順番が安全だと思っています。ページの写真や文章は公開後に差し替えられますが、刷ってしまった紙のURLは直せません。中身が半分でも、名前と連絡先の形だけ決めて1枚のページを公開しておく。この順番だけで、開業直後の刷り直しはかなり減らせます。
なぜ印刷物より先にホームページの「名前」を決めるのか
開業準備では、ホームページの中身が完成していなくても、ホームページのアドレス(ドメイン名)とメールアドレスの形だけは、名刺やチラシを印刷する前に確定させておくのが安全だと思っています。紙は刷った瞬間に内容が固定されますが、ホームページの中身は公開後でも直せるためです。
ホームページのアドレスにあたるドメイン名は、住所ではなく「名前」です。実際の住所にあたるのはIPアドレスという数字の並びで、ドメイン名はその数字に付けた覚えやすい名前だと考えると分かりやすいと思います。名前なので、後から別の名前に変えることもできます。
ただ、変えたときに困るのが紙のほうです。古い名前を刷った名刺やチラシは、そのままでは案内先として機能しなくなります。古いドメイン名を保有し続けて新しいアドレスへ転送する、という救済策はありますが、その契約と設定をいつまで維持するかという話が毎年ついてきます。手元に残った名刺の枚数分だけ、判断を先延ばしにすることになります。
反対に、ページの中身は公開後にいくらでも差し替えられます。写真が数枚しかなくても、メニューが仮でも、あとから足せます。つまり開業準備では「先に固めるのは名前、後から育てるのは中身」という順番が扱いやすい、というのが私の見てきた範囲での実感です。
印刷前に確定させておきたい項目はどれか
名刺・チラシ・看板の印刷前に確定させておきたいのは、ドメイン名の文字列、URLの表記(wwwの有無や末尾の「/」)、メールアドレス、電話番号と受付時間、住所の表記の5点です。いずれも、後から変えると紙のほうを刷り直すことになる項目です。
- ドメイン名の文字列 — 屋号のローマ字表記、ハイフンを入れるか、末尾を.jpや.comのどれにするか。読み上げて相手に伝わるかも確認しておくと安心です。
- URLの表記の形 — 「www」を付けるか付けないか、末尾に「/」を付けるか。作る側の話になりますが、この表記が公開設定やサイトマップ(検索エンジンにページ一覧を伝えるファイル)の指定と食い違うと、検索エンジンが同じページを別ページと判断しにくくなります。当社では公開時にURLの表記を揃えるようにしています。紙面に書く表記も、そこに合わせておくときれいです。
- メールアドレス — フリーメールのまま使うのか、ドメイン名を取ったうえで屋号のアドレスにするのか。ここを後で変えると、名刺を刷り直す理由がもう一つ増えます。
- 電話番号と受付時間 — 開業直後は変わりやすい項目です。紙には変わりにくい情報だけを載せ、変わりやすい情報はホームページ側に書いて「詳細はホームページで」とする方法もあります。
- 住所の表記 — 自宅で開業する場合、番地まで出すかどうかを先に決めておきます。紙と画面で表記が違うと、相手は迷います。
名刺に載せるのはURLの文字かQRコードか
名刺には、文字で読めるURLとQRコードの両方を載せる形をおすすめしています。QRだけだとパソコンで見る相手や印刷がつぶれた場合に行き先が分からず、文字だけだと入力の手間で離れてしまうためです。
項目:文字のURLだけを載せる場合/人が手で入力するため、短く読み違いの少ない表記が必要になります。電話でアドレスを伝える場面や、紙をコピーして配る場面には強いです。
項目:QRコードだけを載せる場合/スマホからは最短で開けます。ただしパソコンで見ている相手、印刷物をコピーしてQRがつぶれた場合、QRを読む習慣がない相手には届きません。またQRだけだと、その紙がどこへつながるのか読み手が事前に判断できません。
項目:両方を載せる場合/名刺なら裏面、チラシなら連絡先のかたまりに、文字のURLとQRを並べる形が扱いやすいと思っています。文字は読み上げ・手入力用、QRはその場で開く用、と役割が分かれます。
項目:看板の場合/通行人が立ち止まって撮る前提になるため、QRの大きさと設置の高さが効きます。屋外では雪や汚れでQRの一部が隠れることもあるので、屋号名と文字のURLを併記しておくほうが確実です。
QRコードと短縮URLでつまずきやすい点は何か
QRコードでつまずきやすいのは、期間限定ページに向けてしまう、外部の短縮URLに頼る、印刷後の読み取りテストをしていない、の3点です。QRの行き先は自分で差し替えられるURLにしておき、印刷前に実際の紙で読み取りを確かめておくと後戻りが減ります。
- QRの行き先はトップページにしておく — 開業記念のキャンペーンページなどに向けると、そのページを消した時点で紙のQRが行き先を失います。トップページに向けておけば、中身を入れ替えても紙は生き続けます。
- 短縮URLのサービスに頼りきらない — 短い文字列に置き換えてくれる便利な仕組みですが、提供が止まったり仕様が変わると、紙に印刷したコードが一斉に使えなくなります。どうしても短くしたい場合は、自社のドメイン名の下に転送用のページを用意して、自分の管理下で行き先を差し替えられる形にしておくほうが安全だと考えています。
- 印刷前に実機で読み取りテストをする — 画面上で読めても、紙のサイズや紙質、余白の取り方で読み取りにくくなることがあります。実際の大きさで試し刷りをして、明るい場所と暗い場所で読んでみる。カメラアプリの表示や操作は機種やOSのバージョンで変わるため、複数台で試せると安心です。
- 行き先のページをスマホで確認する — QRから来る人はほぼスマホです。開いた直後の画面に屋号と事業内容、連絡手段が見えているかを確認します。
- 紙と画面の情報を食い違わせない — 営業時間や定休日を両方に書いた場合、どちらかの更新を忘れがちです。変わりやすい情報はホームページ側に集約する、という決め方が現実的です。
紙から来た人が最初に見る画面はどう作るか
名刺やチラシから来た人が最初に見る画面には、紙と同じ屋号表記とロゴ、事業内容を1〜2行、連絡手段、場所と行き方を置きます。紙で関心を持った人が「ここで合っている」と確認できることが最初の役割です。
- 紙と同じ顔にする — 屋号の表記、ロゴ、色を名刺やチラシと揃えます。紙で見た印象と画面の印象が違うと、相手は「同じ店か」を一瞬確認する作業を強いられます。
- 「何をしている誰か」を1〜2行で置く — 業種、対応エリア、対象のお客様を短く書きます。開業直後で実績が少ないうちは、この1〜2行が信頼の代わりになります。
- 連絡手段を上のほうに置く — 電話、問い合わせフォーム、予約のいずれかを、スクロールせずに見える位置に置きます。紙から来た人は、すでに関心を持って来ています。
- 場所と行き方を具体的に書く — 地図、駐車場の有無、最寄りの目印。札幌や道内で冬に来店がある業種なら、除雪の状況や冬期の駐車について一言あると親切です。
- 更新する場所を一つだけ決める — お知らせ欄でも営業案内でも構いません。開業直後は忙しいので、更新箇所を絞ったほうが続きます。更新が続く状態で渡せるかどうかは、作る側の設計の責任だと考えていて、当社の場合は自社開発のCMS(更新の仕組み)を付けてお渡ししています。2026年9月時点では初期費用と月額に含める形にしていますが、まずは名前とメールの形を決めることから始めていただければと思います。
