士業のホームページ作り変え—なぜ見た目より相談内容の整理が先か
相談の入口から整理すると、作り変えの迷いが減ります
森啓亮(代表) / CRE-COMSENCE(クリコムセンス)

士業のホームページを作り変えるとき、私はデザインより先に「どんな相談を、誰から、どの入口で受けるか」を整理することをおすすめしています。事務所に連絡する前に、多くの方は「この事情を相談していい相手か」「費用はどのくらいか」「誰がどう対応してくれるか」を確かめています。見た目だけを新しくしてもこの3点が書かれていなければ、問い合わせの手前で判断がつかないまま終わってしまいやすいからです。
士業のサイトを見る人は、連絡する前に何を確かめているか
士業のホームページを見る人は、連絡する前に「自分のこの事情を相談していい相手か」「費用はどのくらいか」「誰がどう対応してくれるか」を確かめている、と私の見てきた範囲では感じています。デザインの新しさそのものが判断材料になる場面は、思ったより多くありません。
士業への相談は、商品を買うのと違って「頼んだ後に何が起きるか」が想像しにくいものだと思っています。だからこそ、連絡する前に次のような点を確かめようとされるのだと感じています。
- これは相談していい内容なのか(自分の事情が、その事務所の扱う範囲に入るのか)
- 費用の見当がつくか(相談だけでも料金が発生するのか、初回はどうなるのか)
- 誰が、どうやって対応してくれるのか(担当者、連絡手段、返事までの時間、対面かオンラインか)
- 話した内容がどう扱われるか(守秘のこと、相談した後に断れるのか)
この4点は、デザインを新しくしても、文章として書かれていなければ伝わりません。作り変えで写真や配色だけを入れ替えたサイトを拝見すると、見た目は整っているのに、この4点がどこにも書かれていないことがあります。
逆に言えば、文字だけでもこの4点に答えられていれば、相談の入口としては機能します。作り変えの検討は、まずこの4点が今のサイトに書かれているかを確認するところから始めるのが、遠回りに見えて早いと思っています。
なぜ「取扱業務一覧」だけでは相談の決め手にならないのか
取扱業務の一覧は、すでに手続きの名前を知っている人には役立ちますが、「自分の困りごとがどの手続きに当たるか分からない」段階の人には決め手になりにくいと考えています。作り変えでは、業務名の一覧に加えて、相談の場面から書いた説明を並べることをおすすめしています。
項目: 業務名だけを並べた場合/相談の場面から書いた場合
- 書き方 — 「相続手続き」「遺言書作成」と名称だけ並ぶ/「親が亡くなり、通帳と不動産の名義変更をどうすればよいか分からない」という状況から書き起こす
- 読む人の反応 — 自分の事情がその名称に当てはまるか判断できず、他を探しに行きやすい/「これは自分のことだ」と分かり、次の行動に進みやすい
- 書ける情報量 — 名称だけなので、進め方や期間に触れられない/必要な書類、おおよその期間、事務所が担当する範囲まで自然に書ける
- 作り変えの手間 — 旧サイトから名称を写すだけで済む/状況を洗い出す手間はかかるが、一度書けば長く使える
業務名は、すでにその名称を知っている人にしか届きません。私が草案を作るときも、「その業務を頼む人は、どんな言葉で困りごとを人に話すだろうか」を先に考えるようにしています。
ただし、状況から書くと文章量は増えます。全分野を一度に書き直すのは負担が大きいので、問い合わせの多い分野から1つずつ書き換える進め方で十分だと思っています。
作り変えの前に、何をどの順番で整理するか
作り変えの前に整理するのは、デザインの希望ではなく、実際に受けてきた相談の中身です。私は「過去の相談の棚卸し→分野ごとの整理→初回相談の流れ→料金の書ける範囲→連絡手段」の順に決めてから、ページ構成に入ることをおすすめしています。
- 直近1年ほどの相談・依頼を思い出し、どんな入口から来て、どんな困りごとだったかを書き出します。紹介、電話、既存サイト、他の媒体など、経路も一緒にメモします。
- 書き出した困りごとを、扱う分野ごとにまとめます。件数の多い順に並べると、ページの優先順位がそのまま見えてきます。
- 分野ごとに、初回相談の進め方を1本の流れとして言葉にします。連絡をもらってから、何を聞き、何を持ってきてもらい、どのくらいで方針が出るのか。ここが最も相談前の不安に効く部分だと感じています。
- 料金について、どこまで書けるかを決めます。金額そのものが書けなくても、「初回相談は何分で有料か無料か」「見積もりはいつ出るか」だけでも書いておくと、受け取り方が変わります。
- 連絡手段を決めます。電話のみか、フォームも置くか、返事の目安は何時間か。ここまで決まって、ようやくページ構成とデザインの話に入れます。
私の場合、ご相談をいただいたら先に草案を作ってお見せしていますが、その草案づくりでも1〜3を先に伺います。順番を逆にすると、きれいなページに旧サイトの文章を流し込むだけになりやすいためです。
実績や料金は、どこまで書けると考えればよいか
士業のホームページで実績や料金をどこまで書けるかは、守秘義務と、所属する士業会の広告に関する規程の両方に関わります。制作側が可否を判断できる領域ではないため、次の基準で下書きを作り、最終的な表現は規程と専門家の確認を経て決めるようおすすめしています。
- 依頼者が特定できるかで判断する — 社名や地域、時期、金額などを組み合わせると個人や企業が推測できることがあります。事例を載せるなら、手続きの流れとして一般化できているかを基準にするのが安全だと思っています。
- 掲載の許可を取れているかで判断する — 依頼者の了解が取れている場合でも、どこまで書いてよいかを具体的に確認しておくと、後の行き違いを防げます。
- 効果や結果を約束する表現になっていないかで判断する — 「必ず通ります」「解決します」といった書き方は、結果を保証する表現と受け取られかねません。実際に手続きの結果は事情によって変わるため、断定は避けるのが無難です。
- 所属する士業会の規程に沿っているかで判断する — 弁護士・税理士・社会保険労務士などでは、広告や表示について各会の規程や指針が定められています。内容は改正されることがあるため、最新の規程を確認し、判断に迷う部分は所属会や専門家に確認してください。私は制作側として規程の可否を判断できる立場ではありません。
- 料金は「範囲」と「条件」で書けるかを考える — 一律の金額が書けない業務でも、「着手金の有無」「何によって金額が変わるか」を書くだけで、読む人は見当をつけられます。
公開後の更新と、作り変え時に確認している技術的な点
公開後に続けられる更新は、制度改正のお知らせや休業日の案内など、短く書けるものに絞るのが現実的だと考えています。また作り変えの実装時には、旧URLからの転送、URL表記の統一、事務所情報の構造化データ、フォームの通知先を公開前に確認しています。
たとえば、こんな確認をしています。
- 旧サイトのURLの引き継ぎ — 作り変えでページの住所(URL)が変わると、以前のページを見ていた人や検索結果から来た人がエラー画面に当たります。旧URLから新URLへの転送(リダイレクト)を一覧にして設定します。
- URLの末尾の表記を揃える — ページのURLの末尾に「/」が付くかどうかが、サイトマップや正規URLの指定と食い違うと、検索エンジンがどれを正しいページと見なすか判断しにくくなります。公開時に表記を揃えるようにしています。
- 事務所情報の構造化データ — 事務所名・住所・電話番号・営業時間などを、検索エンジンが読み取れる形式(構造化データ)で書いておきます。求人ページで使う構造化データは、必須項目が1つ欠けるだけでGoogleしごと検索に表示されないため、公開後にGoogleのリッチリザルトテストで確認しています。なお、これらは表示や順位を約束するものではありません。
- フォームの通知先 — 問い合わせが届いたときに、誰の手元に通知が来るかを公開前に実際に送って確かめます。
更新については、制度改正のお知らせや休業日の案内など、短いものを自分で出せる状態にしておくのが現実的だと思っています。2026年9月時点で当社がお渡ししているサイトには自社開発のCMS「UpNote」を標準で載せていて、お知らせの更新や問い合わせの受信を事務所側で完結できるようにしています。もし今のサイトで更新のたびに業者へ依頼している状況でしたら、そこだけでも相談してみてください。
